立夏と書いて、“りっか”と読みます。一年を24つにわける昔の季節の区分、二十四節気の一つですね。
立つという字と四季の組み合わせは、立夏の他に立春・立秋・立冬があり、この4つは四立(しりゅう)と呼ばれるもの。
四立は、それぞれの季節が暦の上で始まることを示していて、二十四節気の中でも特別な存在です。
ところが立夏は過ごしやすい5月の時期で、夏の厳しい暑さが始まる実感が薄いせいでしょうか。立春や立秋と比べると、立夏は知名度が低いような気がします。
時期もいつ頃というのも、すぐには思い浮かばないのではないでしょうか。
そんな立夏ですが、例年いつ頃なのか。また2019年の立夏はいつからいつまでなのか、立夏とはどういう季節なのかについてお届けしていきます。
■目次
立夏の由来と時期
立夏とは、日本が太陰暦だったころに、季節の移り変わりを知るために使っていた二十四節気という区分の一つです。
立夏の日というのは、この立夏という時期の始まる日(節入り日)のことです。
立夏という場合、節入り日の当日のみを指すこともありますが、本来は約15日間の期間を意味します。
2019年の立夏の日(節入り日)は5月6日(月)です。
2019年の立夏の期間は5月6日(月)から5月20日(月)までです。

年によって1日前後しますが、例年5月5日ごろから始まり、次の二十四節気・小満の前日にあたる5月20日ごろまでが立夏の時期になります。
立夏とはこんな季節
5月が始まったばかりですが、暦の上では立夏と同時に夏が始まります。
5月初めの立夏の日から8月初めの立秋の前日までが暦の上では夏になるわけですね。
とはいえ、立夏の時期である5月は、日差しが強くなり気温も上がり出しますが、暑くもなく寒くもなく1年を通じても過ごしやすい気候です。
緑も日を追うごとに濃く鮮やかになり、初夏の陽気が満喫できます。
立夏に入ると、田んぼにも水がはられ、命を育む季節が始まります!
立夏にあたる七十二候
二十四節気をさらに5日ごとの季節に分類した七十二候では、立夏は次のような季節になります。
蛙始鳴(かわずはじめてなく)
5月5日から5月9日ごろは、蛙の鳴き声が盛んに聞こえだす時期です。
春に冬眠から目覚めた蛙が、繁殖期を迎えるのがちょうどこの頃。
蛙の鳴き声は、繁殖期を迎えたオス蛙からメス蛙に送るラブコールなのだそうです!田んぼにも水が張られて、子育ての環境もバッチリですね。
蛙は、毎年同じ場所に戻ってきて産卵をする習性があります。その習性から、蛙の置物は「無事帰る」「お金が返る」「家が買える」など、とても縁起がいいとされています。


蚯蚓出(みみずいずる)
5月10日から5月14日ごろは、みみずが冬眠から目覚めて土の中で動き出す時期とされています。
みみずは、土壌を豊かにするために欠かせない生き物です。
みみずが地中深く掘り進むことで、水はけの悪い土地は水はけが良くなります。反対に水はけが良すぎて水を貯える力が弱い土は潤いが増します。
さらには、土の中に含まれる有機物や微生物を食べるみみずの排泄物は、土を肥やす貴重な養分なのです。
ニョロニョロとした姿でお世辞にも可愛いとは言えないみみずですが、とてもありがたい生き物だったのですね。


竹笋生(たけのこしょうず)
5月15日から5月19日ごろは、タケノコの先っぽが土の表面に出てくる頃。
タケノコといえば、3月から4月、早春の食べ物なのに、5月の中旬になぜ?と思いますがタケノコの種類が違うのだそうです。
一般に私たちが食べているタケノコは、17~18世紀に入ってきた「孟宗竹(もうそうちく)」という外来種の竹です。
一方、この七十二候で出てくるタケノコは、日本に古くからある「真竹(まだけ)」という種類で、5~6月が収穫期。
真竹は、孟宗竹に比べてアクが強く、収穫して時間が経つと強いえぐみが出てきますが、収穫直後は刺身で食べられるほど美味なのだとか。一度、食べてみたいものですね。


立夏の時期の気象データ
5月の気候は、さわやかで「風薫る」という言葉がぴったりです。徐々に気温も上がり始めて、お天気のいい日は初夏を感じることもありますが、過ごしやすいのは湿度が低いためでしょうか。
そこで、立夏の気象データとして、7都市の5月の日中の最高気温と平均湿度を気象庁のデータからお借りしてきました。
都市 | データ | 上旬 | 中旬 | 下旬 |
札幌 | 最高気温 | 26.1℃ | 27.7℃ | 26.0℃ |
平均湿度 | 51% | 62% | 72% | |
札幌 | 最高気温 | 25.0℃ | 26.9℃ | 29.6℃ |
平均湿度 | 58% | 75% | 74% | |
東京 | 最高気温 | 28.2℃ | 28.7℃ | 30.9℃ |
平均湿度 | 66% | 77% | 73% | |
名古屋 | 最高気温 | 28.6℃ | 31.1℃ | 32.7℃ |
平均湿度 | 54% | 61% | 63% | |
大阪 | 最高気温 | 26.7℃ | 29.6℃ | 29.9℃ |
平均湿度 | 57% | 58% | 61% | |
福岡 | 最高気温 | 27.8℃ | 29.5℃ | 31.0℃ |
平均湿度 | 67% | 64% | 64% | |
京都 | 最高気温 | 28.4℃ | 31.7℃ | 32.2℃ |
平均湿度 | 56% | 55% | 56% |
*気象庁のデータから作成
気温は、5月の下旬に入ると最高気温が30℃を超してくる都市がチラホラあります。それでも過ごしやすいのは、やはり湿度の低さゆえですね。
6月に入ると梅雨の走りでジメジメとした日も増えだして、7~8月と高温多湿の日本の夏が始まります。
爽やかな季節は5月が終わると、秋までお預けですね。
立夏の時期の雑学
冒頭でも触れましたが、“立つ”と四季の組み合わせた四立(しりゅう)には、立春・立夏・立秋・立冬があります。
立春は、1年の始まりでもあり、前日の節分が行事として知られています。
立秋は、立秋の日を境に、時候の挨拶が暑中見舞いから残暑見舞いに変わります。
ところが立夏には、特別な行事は無いようです。重なることが多い端午の節句には柏餅・粽と言った食べ物がありますが、立夏だから食べるという習わしではありませんね。
ですが、柏は次の新芽が出てくるまで葉を落とさないことから、柏餅は家系を絶やさないとして縁起がいい食べ物とされています。
季節の和菓子として、立夏の時期、一度は柏餅を食べておきたいですね!


御田植祭(おたうえさい)
立夏は、まさに田植えの季節です。
今でこそ機械化も進んだ田植えですが、ほんの少し前までは、腰をかがめて一苗ずつ植えていく田植えは重労働でした。
そうした田植えの辛さを少しでも和らげようと田植え歌を歌いながら田植えをする風習と、田の神様をお祭りして豊作を願う農耕儀礼が結びついて始まったのが、今でも各地に残る御田植神事です。
日本三大御田植祭として知られているのは
- 三重県志摩市 伊雑宮御田植祭(いざわのみやおたうえまつり)と磯部の御田植
- 千葉県香取市 香取神宮御田植祭
- 大阪府大阪市 住吉大社の御田植祭
旧暦の5月は新暦では6月にずれ込むため、御田植祭によっては6月半ばに行われています。


神様の衣替え、御衣祭(おんぞさい)
立夏の日は、神様の御衣・御料を夏の物にお取替えする祭典が各地の神社で行われます。
天照大神が御祭神である伊勢神宮は5月14日に神御衣祭(かんみそさい)として執り行われていますが、この他にも立夏の日に御衣祭(おんぞさい)を行われている神社があります。
よく知られたところで、
- 八坂神社
- 明治神宮
- 箱根神社
など
これらの神社では、立夏の他に立冬の日にも御衣祭が行われています。


5月は「毒月」
「毒」とくると穏やかではありませんが、陰陽道では旧暦5月は、穢れが多い「毒月」として最も注意して過ごす月なのだそうです。
その中でも、旧暦の5月5日は、「九毒の日」として1年で「最も穢れやすい日」とされています。
5月5日と言えばこどもの日の祝日で五節句の一つ、「端午の節句」。菖蒲湯に入るという風習があります。
実は、菖蒲湯は、1年で最も危険な「九毒の日」の邪気が穢れを払うために入るものなのです。
現在の5月のさわやかな季節と言うイメージからは「毒」は想像がつかないですね。


まとめ
「立夏(りっか)」は、昔使われていた季節の区分、二十四節気の一つで、立夏の日から暦の上では夏が始まります。
年によって1日前後しますが、例年5月5日ごろから始まり、次の二十四節気・小満の前日にあたる5月20日ごろまでが立夏の時期です。
ちなみに、2019年は5月6日(月)から5月20日(月)までが立夏です。
5月は、緑も日々濃さを増し、日中の最高気温が30℃を超す日も出てきますが、湿度も低く過ごしやすい時期です。
6月の梅雨の時期を経て、7~8月と高温多湿の日本の夏がやってきます。
- 次の二十四節気は小満(しょうまん)です。