料理の際に、よく出てくる「あく」抜き、「あく」とり。
そもそもなんですが、「あく」ってどうして料理でとったりすくったりしないといけないのでしょうか?
小学校の家庭科で習った記憶もありません。
私は凝り性なところがあり、カレーなんか作らせると、鍋の横にへばりついて、「あく」をすくっています。
そんな私を見て、横から母が、「たいがいでええやん。」と口を出してくるのですが、いや、料理の本に「あく」は丁寧にすくえってあるでしょと思うわけです。
「あく」は、体に悪いものだと思い込んでいましたが、主婦の先輩母の態度を見ていると分からなくなりました。
そこで、今さらながら、「あく」について、調べることにしました。
全く知らなかったこともあり、調べていて面白かったです。
では、始めていきますね。
「あく」とは
「あく」は、漢字では「灰汁」と書きますけど、灰を水に入れてできる上澄み液が本来の意味だとか。
これが転じて、食材のえぐ味、渋味、苦味など、おいしいと感じにくい成分のことも「あく」と呼ぶようになりました。
そして、必ずしも体に害があるものではなく、野菜・山菜などの「あく」と肉・魚介類の「あく」は、同じ「あく」でも全く違う性質のものだったんです!
私が気になっていた「あく」は体に悪いのか?は、結論から先に言うと、
- 野菜・山菜類の「あく」は体に悪い!
- 肉・魚介類の「あく」は体に悪くない!
という思いがけないものでした。
どういう違いがあるのか、続けてまとめていますので読んでみてください。
野菜・山菜類の「あく」
「あく」のある野菜といえば、すぐに思い浮かぶのは、ほうれん草、茄子、ごぼうなどでしょうか。
山菜類だと、タケノコ、わらびなどがありますよね。
これら野菜・山菜類のアクは取り除かないと、食べたときにえぐ味を感じるだけでなく、健康に害があります。
ほうれん草の「あく」の正体は、シュウ酸という有機物で、これがほうれん草のえぐ味の元です。
和え物やおひたしにする時は、下茹でしてあく抜きをしますよね。
ほうれん草のシュウ酸は、茹でるとお湯に溶け出すので、ほとんどを取り除くことができるからなんです。
油で炒める場合は、油の膜が「あく」を閉じ込めるので「あく」の心配をしなくてよくなります。
「あく」抜きをせずに、ほうれん草を食べてしまった場合、シュウ酸が唾液のカルシウムイオンとくっついてシュウ酸カルシウムというものに変化します。
シュウ酸カルシウムは、カルシウムの吸収を邪魔したり、体内にたまると結石を作る原因になったりするので、ほうれん草の「あく」抜きは、必ずしないといけない調理の過程なんですね。
わらびなどの山菜の「あく」は、発がん性のあるプタキロサイドという毒性の強い成分です。
山菜の中でもわらびは「あく」が強いのですが、ビタミンB1を分解してしまうチアミナーゼと言う成分も含みます。
わらびを「あく」抜きせずに食べると、吐き気が起こるほどです。
野菜や山菜類は、草食動物に食べられないための自衛手段として、これらの毒性を持つようになりました。
すごいですよね、生き物の進化って。
ただ、山菜類は、えぐ味が独特の風味として好まれる食材ですよね。
ごぼうの「あく」であるタンニンも、最近はアンチエイジングに効果があるとしてもてはやされてもいます。
発がん性があるような「あく」は、取り除かないといけない「あく」であることに変わりはありませんが、風味を残すためであったり新たな効能が発見されたりすると、残す「あく」になるというのも面白いところです。
そこで、お肉や魚介類の「あく」を見る前に、もう少し野菜と山菜類の「あく」の成分について整理したいと思います。
害のある「あく」と害のない「あく」
野菜や山菜類の「あく」は、一昔前は必ず下処理で抜くものでした。
ところが、最近分かってきたのは、「あく」の中には体に良い抗酸化物質にあたるものがあるということです。
うーーん、下処理が減るだけでなく、体に良いのは嬉しい話です。
そこで、野菜・山菜類の「あく」の成分を下記の表に分類してみました。
体に | 「あく」の成分 | 「あく」とされる理由 | 代表的な野菜・山菜類 |
害が ある | シュウ酸 | カルシウムの吸収を阻害 結石の原因になる | ほうれん草 たけのこ 小松菜* 春菊* *少量なので「あく」抜き不要 |
チアミナーゼ | ビタミンB1を分解 | ワラビ ゼンマイ | |
サイカシン | 発がん性がある | ワラビ ゼンマイ | |
ピロリジジンルカロイド | つわぶき フキ | ||
ソラニン・チャコニン | 軽度の食中毒 | じゃがいも* *緑の皮・芽に含まれている | |
害が ない | タンニン | 渋みのもと 黒く変色する | ごぼう なす れんこん イモ類 |
クロロゲン酸 | えぐみのもと 茶色く変色する | ごぼう 大根 カリフラワー たけのこ | |
サポニン | 苦み・えぐみのもと ピンクに変色する | ごぼう じゃがいも* *緑の皮と芽は取ること! |
こうしてみると、見た目の問題で「あく」抜きの下処理をしていたものも多いというのが分かりますね。
肉・魚介類の「あく」
さて、続いてはお肉や魚介類の「あく」です。
これらの動物性の食材の「あく」は、身体に害は一切なく、料理の味と見た目のために取り除くものです。
肉・魚介類を煮る・茹でるという調理法で加熱すると、茶色や灰色の泡、つまり「あく」が浮かんできます。
この「あく」が一体何なのかと言うと、お肉や魚介類からタンパク質・脂質・コレステロール・ビタミン類・毛細血管の血液などが、煮汁に溶け出したものが泡として浮かんできた物なのですね。
言うなれば、雑味でもあり、アミノ酸や脂質と言った旨味でもあり。
これが肉・魚介類の「あく」です。
お出汁の中でも一番出汁や、フランス料理のコンソメスープなど。
これらは、透明で澄んでいることも『美味しい』と評価される要素なので、徹底して「あく」を出さない、「あく」をとることをしますよね。
カレーやシチューなど、「あく」が少々残っていても見た目に影響しない料理なんかは、あまり神経質になる必要もないのかもしれません。
イタリア料理の中には、コクや複雑な味わいを出すために、あえて「あく」を取らないものもあるそうです。
まとめ
「あく」と一まとめに考えていましたが、野菜・山菜類といった植物性の「あく」と、肉・魚介類の動物性の「あく」は、まったく違うものでした。
- 植物性の「あく」は、えぐ味・苦味などの元でもあり、身体にとって悪い作用もあるので取り除くことが必要。
- 動物性の「あく」は、身体には害はなく。料理の味・見た目を良くする目的で取り除きます。
あー、すごく納得。
これから、カレーの「あく」とりは、さっさと済ませることにします(笑)