土用といえば、丑の日にうなぎ、土用波、土用干しと夏のイメージがありますが、実は土用は季節の変わり目のことですので年に4回あるのです。
毎回、18日から19日と結構な長さがありますので、4回で70日余りの日数で年間の2割にも相当します。
そんな結構な割合があるにもかかわらず、土用は季節の変わり目で全ての気が乱れるため、注意して過ごす時期だと言われているのをご存知でしょうか。
しかも、やってはいけないとされる事柄もかなりの数。あまり引きずられて過ごすのも良くはありませんが、ここぞという時には、暦の吉凶も良いに越したことはありませんよね。
そこで本日は、土用について、そもそも年4回ある理由や、どういう期間で何に気を付ければいいのか、そして2019年はいつが土用の期間なのかをお伝えしますね。
土用とは
最近では、土用と言えば、土用の丑の日のある7月下旬の時期だけがクローズアップされますが、本来は、立春・立夏・立秋・立冬の前の18~19日の期間のことであり、年に4回あるのです。
そもそも土用は、雑節(ぞうせつ)という暦の一種で、次の季節に向かう準備期間と位置付けられています。
雑節は、五節句や二十四節気と同じく、季節を表わす暦の一種です。
中国から伝わったものと、日本独自の行事が合わさって、多くは農作業の目安の時期が分かるように作られたものです。雑節で有名なものとしては、八十八夜や二百十日などが知られていますね。
4つしかない季節に、それぞれふさわしい五行を当てていくと、一つ余りが出ます。それが“土”だったわけですね。
そこで、暦の上で各季節の始まる前の18~19日間に“土”を当てて、準備期間と位置付けたのでした。
五行説に基づいて、季節の性質を表にまとめると次のようになります。
五行 | 季節 | 由来 |
木行 | 春 | 草木が芽吹く季節だから |
火行 | 夏 | 暑い季節だから |
土行 | 土用 | 次の季節の準備期間 |
金行 | 秋 | 収穫の季節だから |
水行 | 冬 | 雪や氷の季節 |
「土の気」は、万物を保護して育てる性質を持つといいます。こうした「土」の性質から、土用の期間は、新しく迎える季節の気を育む期間とされています。
同時に、 “土に還る”という言葉があるように、「土の気」には“物事の終わりと始まり”、“破壊と再生”という性質があると言われます。
季節の変わり目の土用は、地上に満ちる「土の気」で色々なことが不安定になるため、昔から慎重に過ごすべき「凶」の時期と言われてきました。
土用は「凶」の時期とか言われると急に怖くなりますが、注意すべきことさえ守れば、まったく心配する必要はありません。
続いて、土用の期間は、何に注意すればいいのかを一緒に見ていきましょう!(土用を過ごす注意点を押さえたのちに、年4回の土用の期間がいつなのかをご覧いただきますね。)
土用を過ごす注意点
土用の期間は、“変わり目”ならではの不安定さと、「土の気」が持つ破壊と再生の作用が強くなり、地上の気全体が乱れて影響が出ると言われます。
そのため、土用の期間には、こんなことが増える傾向にあります。
- 思いつきの行動や衝動買い
- 感情の行き違いから人とぶつかる
- 想像もしなかった意外な出来事
- 精密機器のエラーや故障
大きなトラブルとまでは行かなくても、“ムムムっ”と構えるようなことばかりですね(笑)。
でも、不必要に怖がることは無く、そういう時期なのだなと知って、丁寧かつ慎重さを大事にすれば回避できると言われています。
ただ、しっかり避けた方が良いこともありますし、一方で、土用期間にした方が良いということもありますので、それぞれ、具体的にどういう事があるか見ていきましょうね。
避けた方が良いこと
まず、土用期間は、次のようなことを避けるべきと言われます。
- 建築に関わること(地鎮祭や基礎工事の着工など)
- 住環境に関わること(引っ越しや庭木の移動など)
これらに共通するキーワードは“土いじり”です。どうして”土いじり”がよくないのか、その理由を見ていきましょう。
土用の土いじりは避ける
「土用」とは、土の気が作用する時期であることから、そう呼ばれるようになった名称です。
土用の期間、土の気は盛んになり、乱れた状態です。
その時期に無用に土をさわると、土の乱れた気が伝わって健康を害するとまで言い、土をいじることを戒められてきました。
それが、先ほども出てきた地鎮祭や基礎工事の着工などですが、さらには次のようなことも避けるべき“土いじり”にあたっています。
- 土を動かす
- 穴を掘る・埋める
- 庭に花や植物を植える
- 花壇を作る
- 庭木の移動

また、こうした土用に“土いじり”が嫌われた理由の一つに土公神(どくじん)という神様の存在がありました。
土公神とは、陰陽道では土をつかさどる神様で、「土の気」の化身として土用の期間を支配すると言われています。土用の期間に先ほど並べたような“土いじり”をすると、土公神の怒りにふれて災いが起こると考えられていたのですね。
とはいえ、1年の2割に当たる約70日間、土を触れないとあっては、農業や建築・土木などに携わる人たちには頭の痛い話です。
そこで、土用の数日、文殊菩薩が土公神を天上に呼びよせて、土を触っても良い日を作ってくださったというのが、「土用の間日(まび)」というものです。(土用の間日がいつなのか、後ほど土用の期間のところで一緒にご紹介していきますね。)
さらに、土用の期間は、旅行や移動も避けた方が良いという“土用殺”という方角があると言われます。こちらについてもお伝えしますね。
土用殺への旅行や移動は避ける
土用は、その時期によって避けた方が良い方角、土用殺というものが定められています。
- 立春前の冬土用は、北東
- 立夏前の春土用は、南東
- 立秋前の夏土用は、南西
- 立冬前の秋土用は、北西
そもそも土用の期間は、旅行も控えた方が良いと言われますが、春土用はゴールデンウィークと夏土用は夏休みと重なるので、なかなか無理な相談です。
せめて、土用期間の旅行は、凶方位である土用殺は避ける、ということは意識しておきたいところですね。また、土用期間に旅行に行く場合は、あら塩を携帯すると、トラブルを回避できるそうですよ。
では、続いて、土用期間にした方が良いことを見ましょう!

した方が良いこと
まず、基本的な事として、土用は季節の変わり目ですから、体調管理には気を配りたいところですね。
その延長線上で考えて、家の中を整えることも土用の期間にしておくと、次の季節を迎える運気を整えるので吉です。
- 大掃除や整理整頓
- 定期点検
- 部屋の模様替え
- 土用に食べると良いものを食べる
夏の土用の時期には、衣類を虫やカビから守るため風に当てる「土用干し」という風習がありますが、「土用干し」には、こうした意味合いもあったのかもしれませんね。
また、風水の本などでは、立夏や立冬に合わせて衣替えを勧めているものもありますから、土用の時期にすると良いことの一つとしても良さそうです。(それまで衣替えを辛抱するかは別の話ですが(笑))

最後の項目の土用に食べると良いものとして有名なのが、土用の丑の日のうなぎですね。
あまりにも夏土用のうなぎが有名なので、4回の土用とも丑の日にうなぎを食べると言われるようになっていますが、夏以外の土用には、それぞれ違うものを食べると良いとされています。
ちょっと複雑なので、詳しく説明しますね。
土用期間に食べると良い物
五行説には、相克という考え方があるのですが、その考えから夏の土用は「丑の日」に“う”が付くものを食べると良いというのが、土用の丑の日にうなぎを食べるという風習のベースにあります。
土用の丑の日2019年はいつ?一目で分かるカレンダーで楽々チェック!
つまり、季節には、その季節の気が盛んになっているわけですが、それを抑える気(相克)を持ってくることで、中和するということだと理解してください。
そこで、キーになるのが、土用の時期に対応する月の干支です。干支にも五行の気が割り当てられていて、右の図で見て反対にある干支が相克関係になります。
その相対する干支の頭の文字から始まるものや、象徴する色の物が、それぞれの土用に食べると良いものとなるのです。
土用 | 相克する干支 | 食べると良い物 |
春土用(木行・辰の月) | 戌(金行・白) | 「い」から始まる、もしくは白い食べ物いわし、いちご、いか、インゲン豆、芋、大根、しらすなど |
夏土用(火行・未の月) | 丑(水行・黒) | 「う」から始まる、もしくは黒い食べ物うなぎ、梅干し、うり、しじみ、土用餅(関西・北陸)など |
秋土用(金行・戌の月) | 辰(木行・青) | 「た」から始まる、もしくは青い食べ物玉ねぎ、大根、さんま、さばなど |
冬土用(水行・丑の月) | 未(火行・赤) | 「ひ」から始まる、もしくは赤い食べ物ひらめ、ひらまさ、トマトなど |
なかなか、面白いですね。夏土用以外にも、春土用には戌の日に、秋土用には辰の日に、冬土用には未の日に、こうした物を食べるというのもメリハリがあって楽しいですね。
では、最後に、土用の期間がいつなのかを一目でわかるカレンダーでご覧いただきましょう。今までご紹介してきた間日や、相克する干支の日もカレンダーで確認できるようにしていますよ!
2019年の土用の期間はここ!
冬の土用

冬の土用は、丑の月にあるので丑土用とも呼ばれますが、2019年の冬の土用は、1月17日から2月3日までです。
- 土用入り 2019年1月17日(木)
- 土用明け 2019年2月3日(日)
- 冬の土用は、寅・卯・巳の日が間日です
冬の土用には、「未の日」に“ひ”から始まるものか、赤いものを食べましょう。
春の土用

春の土用は、辰の月にあるので辰土用とも呼ばれますが、2019年の春の土用は、4月17日から5月5日までです。
- 土用入り 2019年4月17日(水)
- 土用明け 2019年5月5日(日)
- 春の土用は、巳・午・酉の日が間日です。
春の土用には、「戌の日」に“い”から始まるものか、白いものを食べましょう。
夏の土用

夏の土用は、未の月にあるので未土用とも呼ばれますが、2019年の夏の土用は、7月20日から8月7日までです。
- 土用入り 2019年7月20日(土)
- 土用明け 2019年8月7日(水)
- 夏の土用は、卯・辰・申の日が間日です。
夏の土用には、「丑の日」に“う”から始まるものか、黒いものを食べましょう。
秋の土用

秋の土用は、未の月にあるので戌土用とも呼ばれますが、2019年の秋の土用は、10月21日から11月7日までです。
- 土用入り 2019年10月21日(月)
- 土用明け 2019年11月7日(木)
- 秋の土用は、未・酉・亥の日が間日です。
秋の土用には、「辰の日」に“た”から始まるものか、青いものを食べましょう。
まとめ
最近は、夏の土用がクローズアップされますが、土用は、立春・立夏・立秋・立冬の前の18~19日間と1年に4回あり、次の季節の準備期間という意味があります。
土台にあるのは、世の中の全ての物は“木・火・土・金・水”の5つから出来ているという「陰陽五行説」という考え方で、五行説に基づくと、春は木、夏は火、秋は金、冬は水となり、各季節の間に土が置かれたということだったのです。
また、土用の期間は、季節の変わり目であることと、破壊と再生という作用を持つ土の気の影響が大きくなるため、昔から慎重に過ごした方が良い「凶」の期間とされてきました。
中でも、土用の間は、土の気が強く乱れているという考えや、土を司る陰陽道の神様・土公神を怒らせてはいけないという理由で、土をいじってはいけないとされてきたのです。
土に関連するということで、地鎮祭や基礎工事の着工、引っ越しなども避けた方が良いとも言われていますが、一方で次の季節を迎える準備として、家の整理整頓や大掃除などはした方が良いことと言われます。
ただでさえ、季節の変わり目は体調の管理や、環境の変化がつきものですよね。
「凶」というと身構えてしまいますが、そういう変化の時期なのだなと思えば、慎重になりなさいと言う昔の人の知恵かなと思えてきませんか?
年に4回の土用には、ゆっくりと休んで、部屋の整理もして、次の季節を迎える準備をして過ごしてみるというのも良いですね。
【参考文献】
暦の力で運を興す興運のススメ(説話社)
二十四節気と行事で絶対開運!タイミング風水(河出書房新社)