唇の端がピッと切れる口角炎のことを関西では『あくち』と言います。
口角炎は口を開かないわけにはいかないので、一度出来るとなかなか治らないのが辛いですよね。
私は子供の頃から『あくち』をよくこしらえる方で、そのたびに母から“胃が荒れて熱を持っているから”と言われて大きくなりました。
ただ子供の頃はそう言われてもピンと来ないというか、子供の時分には「胃が痛い」「胃が重い」といったはっきりとした不調を感じたことがなかったのです。
成人式を2回はゆうに済ます年齢になった今も、相変わらず『あくち』との付き合いは続いています。
年とともに、胃そのものが不調というよりは、ストレスから胃がきゅっとなることが増えてきました。
そうなると段々と口角炎はストレスが胃にきて起こるのだと思うようになりました。
ただ、引っかかるのが、「胃が熱を持つ」という母の言葉です。
何となく、中医学の匂いを感じつつ、口角炎と胃腸の関係を調べてみました。
胃の乾きが口角炎につながる
大体、想像はついていましたが、やはり「胃が熱を持つ」と口角が切れるというのは中医学の考え方でした。
中医学では、口の周辺は消化器系と関わりが深いと考えます。
胃腸が弱まると、胃が「熱」を生じ、その熱が口元を乾かして口角が切れて口角炎となる。
これが中医学の考える口角炎の原因です。
では、胃腸がどういう状態になると胃が熱を持つのか。
西洋医学で一般に口角炎の原因と言われることを中医学の観点から説明していきますね。
ストレスも偏食も胃のうるおいを奪う
西洋医学では口角炎の原因は
と考えられていますが、これらの原因を中医学から見ると次のような説明になります。
口角炎の原因について詳しくは→口角炎の原因はストレスだけではなかった!4つの原因と対処法!
- ストレス・睡眠不足などによる免疫力の低下
- 食べ過ぎなどによる胃の不調
- 乾燥や唾液かぶれなどの肌荒れ
- 食生活の偏りからくるビタミンB不足
- 冷たいもの
- 生もの
- 油っこいもの
- 辛いもの
- 味付けの濃いもの
- ゴボウ
- ニンジン
- 白菜
- 山芋
- レンコン
- チンゲン菜
- ほうれん草
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胃に優しい食べ物!胃腸炎でも食べられる消化にいい食材!
風邪を引いたり、ストレスから胃腸の具合が悪くなることがありますよね。 仕事が忙しくて夕飯をとる時間が遅くなる生活が続いたり、年末年始に食べ過ぎたり飲み過ぎたりしたときも胃が弱ることもあります。 胃や腸 ...
- ストレスや睡眠不足による体全体の水分の不足
- 食べ過ぎから胃腸の滞り
ストレスや睡眠不足は、中医学では体の水分不足を招くと考えられています。
そしてもちろん、胃の粘膜からもうるおいが奪われて熱を生じて口角炎の原因になります。
食欲があって食べ過ぎたときも胃腸に滞りができて、胃に熱がたまると考えられています。
辛いもの、味付けの濃いもの、脂っこいものを食べて胸やけが起こった状態も食べ過ぎと同じく胃に熱がたまっていると考えられています。
そして、口角炎や口内炎といったトラブルの他に、口臭がする、歯茎がはれるというときも、同じ原因が考えられています。
西洋医学では、唇の乾燥は口角炎の原因と考えます。
しかし、中医学では、唇の乾燥自体、すでに胃の調子が悪いために熱が口元にあらわれている状況と説明できます。
つまり、口角炎も唇の乾燥や肌荒れも原因は同じという考えになりますね。
中医学では、口角炎になるならないは、体質として胃腸が弱いかどうかを重視します。
体質的に胃腸が弱ければ、偏食をしていなくても、胃腸からの栄養の吸収が悪くなり「気」が不足します。
そうなると口角炎と言ったトラブルがあらわれると考えます。
実は、私は口角炎がないときでも唇がカサカサして皮がむけるということがよくあります。
特に胃の不調を感じなくても、胃が熱を持ちやすい体質だったのだと、今回調べてみて深く納得しました。
胃がうるおうと口角炎も治る
胃が水分不足となってうるおいが無くなり、その熱が口元に上がってきて口角炎が起こすというのが中医学の考え方です。
つまり、口角炎を治すためには、胃を休めることで胃から熱をとり、胃にうるおいを戻せばよいということになります。
そのためには、胃腸に負担のかからない消化の良いものを食べることが第一優先です。
反対に、次のような食事は刺激が強く胃腸に負担になりますので、口角炎の時は避けないといけません。
- 避けた方がよい胃腸の刺激になる食べ物
胃に優しい食事をすると同時に、さらに胃の乾燥改善のために体の水分を補給するという食べ物をとります。
- 胃にうるおいをもたらす食べ物
こうした食事をお腹いっぱいではなく腹八分目の量をよく噛んで食べるようにしましょう。
仕事が忙しいなどで夜御飯が食べる時間が遅くなりがちという人も、できるだけ早い時間に晩御飯を食べて、食後と寝る時間に2時間は置きたいですね。
また私のように体質から口角炎が出来るという人は、食生活だけではなく、漢方薬での体質改善を考えても良いのかもしれません。
胃が熱をもつ状態は「胃陰虚」と言うそうですが、陰虚を改善する代表的な漢方薬をご紹介します。
胃のうるおいを増やす→「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」
ストレスから胃腸に負担→「加味逍遥散(かみしょうようさん)」
そして、睡眠を十分にとること、疲れをためない、ストレスをためない事も心掛けること。
この3つは、口角炎に限らず健康な生活を送るためには必要不可欠です!
まとめ
子供の頃から口角炎ができると、“胃が荒れていて熱をもっている”と言われてきましたが、この考え方は中医学によるものです。
中医学では、胃腸と言った消化器の不調は口元にあらわれると考えられています。
特に口角炎と言った口元の乾燥によるトラブルは、不調からうるおいが不足した胃の熱が原因とされています。
胃が熱を持つ原因としては
の2つがありますが、ともに胃の粘膜からうるおいが無くなり、胃に熱がたまるとされます。
結果、胃の熱が口元に上がり、口角炎などのトラブルにつながります。
こうしたときには、冷たいものや油っこいものは、胃にとっては刺激ですので避けます。
胃の疲れをとるためにも胃腸に優しい消化の良い食事をとり、さらに胃に水分を戻す山芋やレンコンなどの食品を食べると口角炎の改善に効果があります。
食べる量も腹八分目の量を心掛けてよく噛んで食べること。
また食事をとる時間も夜遅くならないようにリズムを整え、食後はゆっくりとリラックスすることも効果的です。
私のように口角炎がしょっちゅう出来るという人は、中医学的に胃が熱を持ちやすい体質といえます。
食生活や生活のリズムに気を付けることと、体質改善のために漢方薬を飲むということを検討してみてもいいでしょう。