ことわざを調べてみると、ことわざと思っていたものが慣用句だったり、またその逆もあったりしますよね。
しかも、見る辞書によって言っていることが違うということもままあります。
個人的には、ことわざと慣用句とは次のようなものだと思っていました。
- ことわざ → 格調高い教訓が入っている
- 慣用句 → 単なる言い回し
ですが、いろはがるたで有名で教訓も無さげな「犬も歩けば棒に当たる」もことわざだと知り、”ことわざって何?慣用句って何?”と、だんだん分からなくなってしまいました(笑)。
そこで、本日は、ことわざとは、慣用句とは何なのか、そして2つの違いは果たして何なのかをしっかり調べてみることにしました!
なぜ、はっきりと区別できないのかが分かって、個人的にはとてもスッキリしましたよ(笑)。
ことわざは慣用句の一部だった!
先に結論を見出しで出してしまいましたが、ことわざと慣用句は別物ではなく、実はことわざが慣用句の一部だったのです。
違いを知りたいのに、何じゃそりゃ?と思われたかもしれませんね。
私も“違うもの”という思い込みをもって、調べだしたのですが、よく見かける説明ではスッキリしなかったのです。
なぜスッキリ出来なかったのか。ことわざと慣用句の違いについて、よく見かける説明を一緒に押さえておきましょう。
よく見る「ことわざと慣用句の違い」の説明
ことわざと慣用句の違いとして、よく見る説明は次のようなものではないでしょうか。
- ことわざ → 古くから言い慣わされてきた人生の真実や教訓などを示す言葉
- 慣用句 → 2語以上が結びついて特定の意味を表す定型句
そして、この説明の後に、2つの区別はあいまいで、ある言葉は辞書によってはことわざだったり慣用句だったりすると付け加えられていることが、ほとんどではなかったでしょうか。
今回調べるまでは、私も上の説明と近い解釈をしていました。
ことわざと慣用句は別々の物だけど、一部重なっていて、その部分が区別があいまいになる。そのイメージを図にしたのが下の図です。
でも、両方が重なる部分に、決まりのようなものがあるのかどうかが、今回知りたい事じゃないですか(笑)。
“うーん、分からん”と思っていたら、個人的に“これだ!”とスッキリできる説明を発見しましたのでご紹介しますね!
ことわざは慣用句に含まれる!
もったいつけずに、早速ご紹介しましょう。
【慣用句】
二つ以上の語が、つねに結び付いて用いられ、全体である特定の意味を表すようになった表現。
「李下(りか)に冠を正さず」「光陰矢のごとし」といった諺(ことわざ)や格言をはじめとして、「油を絞る」「手を下す」といった単なる慣用的な言い回しまでを含む。~日本大百科全書~
これを見つけた時は、ほんと、”これだ!”とスッキリしました。
別のものだと思い込んでいましたが、なんと、慣用句の中にことわざは含まれていたのです。
ではここで、ことわざは慣用句の一部という目で、もう一度、慣用句とことわざの意味を大辞林で確認てみましょう。
- 慣用句
- 二語以上が結合し、その全体が一つの意味を表すようになって固定したもの。「道草を食う」「耳にたこができる」の類。慣用語。イディオム。
- 二語以上が、きまった結びつきしかしない表現。「間髪を入れず」「悦に入る」の類。慣用語。イディオム。
*「イディオム」とは、慣用句や成句、熟語のことです。
- ことわざ
昔から人々の間で言いならわされた、風刺・教訓・知識・興趣などをもった簡潔な言葉。
「ごまめの歯ぎしり」「朱に交われば赤くなる」「出る杭は打たれる」「東男に京女」などの類。~大辞林~
最近は、英語由来のことわざのように長いものもありますが、ことわざは基本、短く簡潔なものが多いです。そして、2語以上の言葉が、いつも同じように結びついて、特定の意味を表します。
これって、まさに慣用句の定義に当てはまりますよね!
言葉の意味に、はっきりと「風刺・教訓・知識・興趣」が含まれていれば、どの辞書でも「ことわざ」に分類されます。
ところが、人によって「風刺・教訓・知識・興趣」の有るか無いかの解釈が分かれるものは、「ことわざ」になったり、「慣用句」になったりということが起こります。
例えば、ことわざだと思えるのに、辞書によっては慣用句に分類されているものに、次のようなものがあります。
- ことわざと思えるのに慣用句に分類されることがあるもの
- 足元から鳥が立つ
- 後足で砂をかける
- 海の物とも山の物ともつかない
- 快刀乱麻を断つ
- 木に竹を接ぐ
- 九死に一生を得る
- 清水の舞台から飛び降りる
- 光陰矢の如し
- 蝶よ花よ
- 名をとるより得を取れ
- 李下に冠を正さず
ぱーっと見るだけでも、ことわざと慣用句の区別の難しさが分かりますね。元々、慣用句の一部がことわざなわけですから、区別があいまいになって当然だったのです。
ここまで、慣用句の中にことわざが含まれるということを見てきました。ただ、やはり、それぞれに意味や役割があります。
せっかくですので、「ことわざ」と「慣用句」の意味や役割についても詳しくお伝えしていきますね。
「ことわざ」とは
多くの人が、「ことわざ」とは、人生の教訓を説いた短い文章だと理解されているのではないかと思います。
最初にも触れましたが、私自身もそう思っていました。ですが、その理解がぐらぐらと来たのが、「犬も歩けば棒に当たる」がことわざだと知った時です。
この点も疑問だったのですが、今回、調べているうちに出てきたのが、「格言」という言葉でした。
ことわざを説明するために、「格言」という言葉が使われていることが多く、”え?格言ってことわざのことじゃないの?”と新たな疑問が出てきてしまいました。
ことわざは教訓だけでは無かった!
ここで、もう一度、大辞林に登場願いましょう。
- ことわざ
昔から人々の間で言いならわされた、風刺・教訓・知識・興趣などをもった簡潔な言葉。
「ごまめの歯ぎしり」「朱に交われば赤くなる」「出る杭は打たれる」「東男に京女」などの類。- 格言
短い言葉で、人生の真理や処世術などを述べ、教えや戒めとした言葉。「石の上にも三年」「沈黙は金」など。金言。
~大辞林~
ことわざには、教訓を伝えるという役割だけでなく、風刺や生活の知恵、またそれらを言葉遊びのように見せて伝えるという役割もあったのです。
そして、「格言」というのは、ことわざの中の教訓的な役割だけを抜き出したもの。
ここでようやく気付いたのは、私にとって「格言=ことわざ」だったということでした。
また、私がことわざではないと思っていた、いろはがるたは、庶民の生活の知恵を伝える言葉遊びであり、立派な「ことわざ」なのだということもようやく分かりました(笑)。
さきほど、慣用句とことわざの関係をイメージした図を見ていただきました。しかし、ここにきて、私の中の慣用句とことわざ・格言の関係図が上書きされました。
物事は、ちゃんと調べてみないと、分からないものですねぇ(笑)。
また、ことわざとされる文章には、一定の規則性があるようなので、ご紹介しますね。
ことわざの特徴
まず、ことわざとされる言葉の多くは、昔の庶民の生活から生み出された生活の知恵的なものです。
ことわざの由来は、その他に次の4つがあげられます。
- ことわざの由来
- 庶民の生活の知恵
- 中国の古典(故事)
- 仏教の教え
- 英語圏のことわざ
- 偉人の言葉
中国の古典や仏教の教えに由来するものが、主に格言的なものになりますね。
さらに、庶民が生活の中で言い慣わされてきたという点から、ことわざには次のような特徴があります。
- ことわざの特徴
- 簡潔
- 語呂が良い
- リズムがある
ことわざのリズムとは、日本お得意の五・七の調べのこと。「雨降って地固まる」は、五・五調、「秋茄子は嫁に食わすな」は、五・七調といった感じですね。(もちろん例外もありますよ~)
庶民の生活の知恵から生まれているだけに、「長いものに巻かれろ」なんて保守的なものが多いのも特徴の一つでしょう。
また、一つのことわざが伝えることが出来るのは、真理の一面に限られます。そのため、一つの事柄に対して正反対の意味を持つことわざが存在するケースが多く見られます。
- 正反対の意味を持つことわざ
- 人を見たら泥棒と思え ⇔ 渡る世間に鬼はなし
- 嘘つきは泥棒の始まり ⇔ 嘘も方便
- 三度目の正直 ⇔ 二度あることは三度ある
- 好きこそものの上手なれ ⇔ 下手の横好き
加えるなら、ことわざには、直接的な表現より、間接的な表現(比喩)が多いのも、生活の知恵を反映していると言えますね。
比喩だけに上手く使えば、相手を納得させたり、慰めになったりと、感心されることになりますが、使いすぎると鼻につく点だけはご注意ください(笑)。
慣用句とは
慣用句は、一見関りの無さそうな2つ以上の単語が、固定した組み合わせとして使われることで、特定の意味を持つ表現の事です。
広い意味では、ことわざは慣用句になりますが、「油を絞る」「手を下す」といった単なる慣用的な言い回しの場合、ことわざのように風刺や教訓としての役割は持ちません。
日常生活の行動や出来事を意外な単語を組み合わせて、絶妙かつ気の利いた表現にすることに成功したのが慣用句なのです。
いくつか例をあげてみると・・・
- 使われれている単語と全く違う意味を持つのが慣用句
- 目が無い → 何かをとても好きなこと
- 間髪入れず → 間をあけずに
- 手も足も出ない → なすすべがないこと
- 犬も食わない → 誰も相手にしない
- 猫をかぶる → 本性を隠しておとなしそうに振る舞う
- 釘を刺す → 後で問題にならないように、注意したり念を押したりすること
- 油を絞る → ひどく叱ったり責めたりすること
手や足など体の一部を使ったもの、犬や猫、道具や食べ物と、生活に根付いた言葉が多いのも慣用句ならではですね。
また、慣用句もことわざと同じく、語呂の良い言い回しであることが多いです。ある意味、口に出した時の語呂やリズム感があるからこそ、長年使われ続けてきたとも言えます。
そして、慣用句に関して注意しないといけないのが、使うときに1文字でも言い間違えると、本来の意味を持たすことが出来ないということです。
さっきの例でいうと、「目が無い」の“が”を“は”に間違えるだけで、聞いている人の頭がクエッションマークだらけになるのが、目に浮かぶようです(笑)。(“目に浮かぶ”も慣用句でした!)
まとめ
気の利いた会話には欠かせないことわざと慣用句ですが、ことわざなのか慣用句なのか、はっきりと区別できない言葉が多いものです。
この2つについて、大辞林を調べると、こんな意味が載っていました。
- 慣用句
- 二語以上が結合し、その全体が一つの意味を表すようになって固定したもの。「道草を食う」「耳にたこができる」の類。慣用語。イディオム。
- 二語以上が、きまった結びつきしかしない表現。「間髪を入れず」「悦に入る」の類。慣用語。イディオム。
*「イディオム」とは、慣用句や成句、熟語のこと。
- ことわざ
昔から人々の間で言いならわされた、風刺・教訓・知識・興趣などをもった簡潔な言葉。
「ごまめの歯ぎしり」「朱に交われば赤くなる」「出る杭は打たれる」「東男に京女」などの類。~大辞林~
さらに、ことわざと慣用句について多く見られたのは、区別があいまいで明確に分けることが難しいということでした。
そこが知りたいところなのにと、色々と調べている中で、見つけたのが次の説明です。
【慣用句】
二つ以上の語が、つねに結び付いて用いられ、全体である特定の意味を表すようになった表現。
「李下(りか)に冠を正さず」「光陰矢のごとし」といった諺(ことわざ)や格言をはじめとして、「油を絞る」「手を下す」といった単なる慣用的な言い回しまでを含む。~日本大百科全書~
つまり!ことわざと慣用句は、まったく違うものではなく、ことわざは慣用句の一部ということだったのです。
それなら、区別が難しくなるのも分かります。
「風刺・教訓・知識・興趣」があるか無いかという主観が判断基準なのですから、ある言葉が「ことわざ」とされたり、「慣用句」とされたりするのも納得です。
ただ、ことわざと慣用句は全く違うものという先入観念があったので、ことわざも慣用句に含まれるというのは、私としては目から鱗な発見でした!
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