うんちく話

先祖と祖先の違い!使われ方から違いがはっきり分かる!

「京都市内の墓地には大勢の人が墓参りに訪れ、祖先をしのび静かに手を合わせています。」

お盆の入りの8月13日、リビングのテレビから流れてきたNHKのニュースの声にふと食器を洗っていた手が止まりました。
お墓参りで『先祖をしのび』の間違いちがう?

隣にいた母も同じことを感じていたようで、「祖先とは言わへん気がするなぁ」と呟いています。

その翌日のお墓参り関連のニュースでも「祖先の霊をしのび」とNHKのアナウンサーが伝えています。

NHKが日本語を間違えるわけがない!
でも、なんだかしっくりこない!

「先祖」「祖先」、同じ感じで順番が違うこの二つの言葉。
今まで気にしていませんでしたが、何かはっきりとした違いがあるのかが、どうも気になりだしました。

本日は、先祖と祖先の違いについて調べたことをまとめました。

辞書でひく意味に違いは?

先祖・祖先違いtop
言葉の意味といえば、やはり辞書ですね。

大辞林第三版に載っている「先祖」と「祖先」の意味から見てみます。

『先祖』
家系の初代。
また、その血統に連なる先代までの人々。

『祖先』
一族・一家の初代に当たる人。
また初代以来、先代までの人々。
先祖。(「先祖」よりも客観的な立場でいう語
現在のものに発達してきた、もとのもの。

どうでしょう?
違いがあるのかないのか、どう判断すればよいのか悩む内容です。

表現の仕方が違うだけで、“初代”、“先代まで”とキーワードとなる言葉は一緒です。
しかも『祖先』の意味説明に、「先祖」と明記されています。

違いがあるのは、『祖先』の後半、オレンジ色塗りした「客観的な立場」です。

ですが、これだけでは、何だか分かったような分からないような、具体的にどう違うのかが今一つ見えてきません。

そこで、この2つの言葉の違いを理解するヒントを実際の使われ方に求めてみました。
ニュースや慣用句での使われ方を調べてみて、ようやく私は何がどう違うのかがスッキリしましたので、その内容をシェアしていきますね

お盆関連の報道で違いは?

そうです、そもそも私が「先祖」と「祖先」の違いが気になったのはお盆のニュースを聞き流していた時です。

そこで!
2017年8月11日~17日の1週間を対象に、「先祖×お盆」「祖先×お盆」でニュースを検索してみました。

使われていた表現と検索にヒットしたニュースの件数を下記の表にまとめていますのでご覧ください。

Googleで検索先祖×お盆祖先×お盆
使われていた表現
  • お盆に迎えた先祖を
  • 先祖の霊を送る
  • 先祖の霊を供養した
  • 先祖しのび合掌
  • 家族連れらが先祖に感謝
  • 祖先の霊を迎え
  • 祖先の供養と
  • 祖先の霊をしのび
検索件数95件10件

使われていた表現は正直似たり寄ったりだと思いますが、明らかに差がついたのは検索件数です。
お盆は、やはり「祖先」より「先祖」の方が、違和感がないと言える件数差かと思います。

ただ、それは“慣れ”の問題であって、本題の「先祖」と「祖先」の違いがあるかどうかの解決にはなりません。

もう一度、言葉という点にこだわって、今度は慣用句に焦点をあてて、「先祖」と「祖先」の違いを考えていきます。

慣用句での使われ方に違いは?

人類の祖先はアフリカで誕生
まずは、「先祖」の慣用句からと行きたいところですが、悲しいことに両方とも数が本当に少ない。。。
ですが、ここは気を取り直して、ご紹介することにしましょう。

先祖の慣用句・熟語

  • ご先祖様
  • 先祖返り
  • 先祖伝来
  • 先祖代々
  • 何代前の先祖
祖先の慣用句・熟語

  • 人類の祖先
  • 祖先崇拝

数は少ないなりに実際の使い方を見ていると、辞書の意味だけではうっすらとしていた違いが浮かび上がってきましたね!

「先祖」と「祖先」の違い

言葉として別々に存在する以上、違いはあるものの、この二語は言葉の意味としてはかなり被っていると言えます。
違いがあるのは、意味そのものよりもニュアンスと使われ方というのが私の結論です。

違いとして3点、次にまとめていますのでご覧ください。

生物学的な進化は「祖先」

ある生物が進化する前の種を述べるときには「祖先」を使う。

これは辞書にも出ていた差の部分ですね。
犬の祖先は狼とは言いますが、犬の先祖は狼とは言いませんよね。

具体性をもつ直系尊属は「先祖」

「先祖」には、祖父母からたどれる尊属という意味合いが強い。

慣用句・熟語から、この違いははっきり読み取れますね。
「先祖」というと、血のつながりを感じる、自分に直接つながる存在という身近さと親近感がニュアンスとしてありますね。

その分、「祖先」は、はるか遠い高い存在というニュアンスがあって、それが「祖先崇拝」という言葉に表れています。

ちなみにですが、「先祖崇拝」も聞くけどなと思い辞書を引いてみたところ、この言葉は私の持っている辞書にありませんでした。
WEBで検索できる辞書も「祖先崇拝」が代わりに検索結果に表示されるので、なるほどなというところです。

客観性をもたせるときは「祖先」

客観的な立場で述べるときは「祖先」を使う。

辞書にもあった違いですね。

だから、NHKでは、報道という客観性から「祖先」を使っているのだと思われます。
ただ、他の報道機関は必ずしもそうではないので、この点も厳密に使い分けされているわけではなさそうです。

まとめ

「先祖」と「祖先」は、言葉の意味としては、「祖先」に生物学的な進化をあらわす意味がある以外、大きな差はありませんでした。
言葉のニュアンス、使い方として、「先祖」は「祖先」より具体性があり主観的に使うほうが適切です。

中国も韓国も「祖先」の一語のみということからも、「先祖」という言葉は、日本語特有の細かいニュアンスの差をあらわしたいがために生まれてきたのかなと思いました。




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