こたつと言えば、かごに盛られたみかん。
冬の定番の一つですが、どういう意味があるのか気になりますよね。
こたつで寝ると風邪を引くと言われる理由を調べてみると、こたつでみかんを食べるのは健康的にも理にかなっているので、てっきり昔の人の知恵だと思っていたのですが、意外や意外、この2つがセットになったのは最近のことでした。
しかも、健康の理由というよりも、どうも需要と供給というか、当時の経済事情や生活事情から、くっついた組み合わせのようです。
ですが、こたつで手を伸ばせばみかんがあるという状態は非常にメリットが大きいことに変わりはありません。
むしろ、これからの生活にこそ、「こたつにみかん」は最強のペアといっても過言ではありません!
本日は、そんな古くて新しいこたつとみかんのお話です。
こたつもみかんも古くて新しい
こたつとみかんが、私たちの生活にあって当たり前のものになったのは、昭和30年代のことです。
ただ、こたつの原型は室町時代にすでに誕生していましたし、みかんにいたっては、原種の橘(たちばな)が古事記や日本書紀に記述されているほど古くから存在していました!
それがどうして、こうまで冬の定番と言われる組み合わせになったのか、少し歴史を紐解いていきましょう。
こたつが広まるまで
こたつは、室町時代に禅僧が考案したと言われていますが、庶民の間で使われるようになったのは、江戸時代になってからです。
日本の家屋は、高温多湿の夏にあわせているため気密性が低い構造です。
そのため、冬の寒い季節には、家全体を温めるのではなく、下半身を部分的に温める暖房器具であるこたつが使いやすかったといえます。
熱源が練炭・炭団(たどん)から電気に変わった電気ごたつは大正時代に初めて製品化されましたが、戦後になって一気に普及するようになりました。
みかんが広まるまで
みかんが歴史に初めて登場するのは、今から1200年前も昔のことです。
古事記や日本書紀に、不老不死の果物として記述されている「橘(たちばな)」がみかんの原種にあたります。
不老不死というだけあって、当時は薬として用いられていたようです。
みかんに限らず、果物自体が生産・消費されるようになったのは、江戸時代の末期まで待たないといけません。
国策としても、優先すべきは米の生産という時代が長かったためですね。
し好品である果物の生産は、厳しく規制もされていました。
りんごもブドウも桃も、明治に欧米から入ったものがほとんどです。
その中でみかんだけは、400年前に日本で誕生した種無しの温州みかんが、食べやすさと味の良さから生産の主流を占めています。
面白いことに、温州みかんは「種無し」だったことから、跡取りがお家継続の必須条件だった武家には嫌われて、鹿児島の一角で細々と栽培されていたそうです。
ようやく明治にいったん広まった果樹栽培も、第二次世界大戦中には、またまた国策から途絶えてしまいます。
再び果物の栽培が回復するのは、1950年代以降のこと。
みかんも例外ではなく、1950年から1990年代まで生産量は右肩上がりに増えていきました。
こたつとみかんの出会い
ここまで読んでいてお気づきになったと思いますが、こたつもみかんも戦後の同じ時期に生産が増え、同じ時期に一般家庭に受け入れられています。
そして、この時期は、テレビが一般家庭に普及していった時期と重なります。
つまり、日本人の生活水準とスタイルが一気に豊かに変わっていた時代です。
茶の間で家族みんなでこたつに入ってテレビ観戦というスタイルに、手軽に食べられるみかんがマッチしたことが想像されます。
当時でも、こたつに入ったら動きたくなくなることに変わりはなかったことでしょう(笑)
みかんは、こたつの上に置いておいても10日から2週間ぐらいは保存がききます。
子どもでも自分でむいて食べることができる果物ですのでお母さんにとって好都合です。
そして、冬はみかんの旬の時期です!
こうした条件が重なり、こたつとみかんのペアが完成していったと考えることができます。
こたつとみかん。
存在自体は、両者ともに古くからあるものでしたが、この組み合わせが生まれたのはほんの数十年前という新しさだったのでした。
「こたつにみかん」は理にかなっている
そんな生活様式の変化で誕生したといえるこたつとみかんの組み合わせですが、健康の面からも、とても理にかなった組み合わせなのです。
冬は、いわずとしれた風邪の季節ですよね。
風邪の予防に効果があるビタミンCが、みかんにはたっぷりと含まれています。
みかん2個で、1日に必要とされるビタミンCが取れるほどなのですよ!
ビタミンC以外にもみかんには多くの栄養が含まれていて、その栄養価の高さは果物の中でもトップクラスに位置します。
栄養が多い分、色々な効果が体にはあるのですが、こたつに入りながらみかんを食べる一番のメリットそうした健康への効果よりも水分補給にあります。
こたつの中の温度は、「低」に設定していても、おおよそ40℃あり、体温よりも高い温度になっています。
そうすると、体は汗を出して体を冷やそうとしますので、知らず知らずに水分を失っています。
そこで、みかんです。
みかんは100gあたり86.9gが水分です。
水分が不足すると、鼻や喉の粘膜が乾いて風邪にかかりやすくもなりますし、血液もドロドロになって脳梗塞や心筋梗塞のリスクも出てきます。
「こたつにみかん」は、体のためにとっても意味のある組み合わせでもあったのでした。
これからも残したい「こたつにみかん」
さて、そんなこたつとみかんですが、1990年代をピークに急激に生産台数と出荷量を減らしています。
フローリングのリビングが増えたことや、一家に一台だったテレビも一部屋に一台近くになったことといった住宅環境の変化が、こたつが減っている要因と言われています。
そうしたこたつの減少がみかんの消費量の減少につながっているとも言われていますが、果物全体が消費を落としているという背景もありますし、みかんの場合もお菓子やスイーツの種類が増え消費者にとって選択肢が多くなったという社会の変化が一番大きな要因と言えるのではないでしょうか。
こたつとみかんの組み合わせも生活スタイルの変化の中で生まれてきた歴史の浅いものではありますが、家族団らんと果物を食べるという良い習慣作りにも一役買ってきた組み合わせです。
私の弟家族は、こたつを置くと部屋が散らかるといって、こたつを置いていなかったのですが、姪と甥の成長にあわせてリビングにこたつを置くようになりました。
また、こたつはエアコンやファンヒーターなどと一緒に使えば節電・節約にもなります。
変化には進歩という側面もありますが、こたつとみかん、これからも残していきたいリビングの風景ではないでしょうか。
まとめ
「こたつにみかん」、ずっと昔からある先人の知恵が生み出した組み合わせと思っていましたが、昭和30年代に生まれたものでした。
こたつは室町時代、みかんは古事記に記述されているほど古くから存在していましたが、ともに一般家庭に普及したのは実に戦後になってからのことです。
同時期に普及したのがテレビです。
こたつに入って家族でテレビを見る。
そうした中で、みかんが、その保存性の良さと手軽さと、冬が旬であるというタイミングの良さから、こたつにみかんの組み合わせが完成したと考えられます。
そんな昭和に生まれた「こたつにみかん」も、平成に入るとさらなる生活様式の変化にともなって、リビングから消えつつあります。
家族団らんと果物を食べるという良い習慣作りにも一役買ってきた「こたつにみかん」。
これからも残していきたいものです。