いつも6月に入ると、今年も半分終わるのかと焦ると同時に1年の後半に向けて、気持ちも少しだけ新たになるような気がします。
そんな半年の区切りにピッタリな神事が6月30日の夏越の祓(なごしのはらえ)の茅の輪くぐりです。
本日は、
- 茅の輪のくぐり方
- くぐるときに唱える言葉
- 日本古来の神様にまつわる由来
について詳しくお伝えしていきますね。
茅の輪のくぐり方
6月と12月の晦日(みそか、月末のこと)には、半年の間の罪や穢れを祓い、次の半年の無事と健康を祈る大祓(おおはらえ)の神事が、各地の神社で行われます。
- 6月30日の大祓は、夏越の祓(なごしのはらえ)または水無月の祓(みなづきのはらえ)
- 12月31日の大祓は、年越しの祓(としこしのはらえ)
茅の輪くぐりは、夏越の祓に行われる穢れ祓いの一つです。
では、茅の輪のくぐり方と、唱える言葉をご紹介していきましょう。
- 茅の輪の前で軽く一礼し、左足で茅の輪をまたいでくぐり、左回りに1周し、茅の輪の前に戻ります
- 再び、茅の輪の前で軽く一礼し、今度は右足で茅の輪をまたいでくぐり、右回りに1周し、茅の輪の前に戻ります
- みたび、茅の輪の前で軽く一礼し、左足で茅の輪をまたいでくぐり、もう一度、左回りに1周し、茅の輪の前に戻ります
- 茅の輪の前で最後の一例をして、左足で茅の輪をまたいでくぐり、そのままご神前に進んで二拝二拍手一拝でお参りしましょう!
回りながら唱える言葉
(みなづきの なごしのはらえするひとは ちとせのいのち のぶというなり)
回りながら唱える言葉
(おもうこと みなつきねとて あさのはを きりにきりても はらいつるかな)
意味は、“思い悩んでいることが全て無くなるように祈りながら、麻の葉を切って切って、大祓をするのだ”となります。
回りながら唱える言葉
(そみんしょうらい そみんしょうらい)
*九州総守護神社諫早神社の「茅の輪くぐり」唱え歌から
神社によっては、「祓え給い、清め給え、守り給い、幸え給え(はらいたまえ きよめたまえ まもりたまえ さきわえたまえ)」を唱えると案内されているところもあります。
また、1周目の「水無月の 夏越の祓す~」を3周とも繰り返すとされる神社もありました。
「茅の輪のくぐり」唱え歌を何も見ずに唱えるのは大変だと思ったら、諫早神社さんは、ちゃんと唱え歌が印刷された紙を用意してくださっているとのこと。
せっかくですから、お参りする神社が案内される唱え言葉でしっかりお参りしたいですね。
では続いて、茅の輪くぐりの由来について詳しく見ていきましょう!
「茅(ちがや)」をお守りにはなりません!
むしろ、茅の輪は、輪をくぐった人の穢れや罪、厄災が「茅」にくっついています。
その「茅」を持ち帰るのは、そうした罪や穢れなどを持って帰るようなもの。
お守りどころか、要らぬものを持ち帰る恐れがありますので、引き抜いて帰るのは絶対やめましょうね。
茅の輪くぐりの由来
茅の輪は、「茅(ちがや)」というイネ科の植物の草で編まれています。
神社の参道の鳥居や、境内に笹の葉を立てた間に立てられた大きな茅の輪をくぐって、半年の穢れを祓い、残りの半年を健康で安らかに過ごせるよう祈るものです。
茅の輪に、穢れを祓う力があるとされる由来は日本神話にありました。
蘇民将来の説話
その昔、貧しい兄、蘇民将来(そみんしょうらい)と、裕福な弟、巨旦将来(こたんしょうらい)という兄弟がいました。
ある日、1人の旅人が兄弟のいる地を訪れて、弟・巨旦将来に一晩泊めてほしいと頼んだところ、あっさり断れてしまいました。
次に、兄・蘇民将来に泊めてほしいと頼むと、蘇民将来は快く泊めてくれ、貧しいながらも精一杯、旅人をもてなしたのです。
実は、この旅人、日本神話の神様、スサノオノミコトだったのですね。
数年後、再び兄弟の住む地を訪れたスサノオノミコトは、自分を冷たくあしらった巨旦将来一族を滅ぼすために疫病をふりまきます。
ところが、自分に親切にしてくれた蘇民将来の娘が巨旦将来の妻になっていました。
恩人の娘まで殺すわけにはいかないと、疫病から外す目印に「茅の輪」を身に着けておくように伝えます。
その時、「茅の輪をつけている者は、蘇民の子孫として厄難から守る」という約束も蘇民将来に与えられたのです。
この蘇民将来の説話から、「蘇民将来子孫也」と書かれた札を玄関に貼るという習慣が各地で生まれ、大祓の茅の輪くぐり神事が行われるようになりました。
現在の人がくぐれる大きさになったのは江戸の初期のことだそうですよ。
茅の輪が持つ2つの意味
スサノオノミコトと蘇民将来の約束に、なぜ「茅の輪」が選ばれたのか。
それにもちゃんと2つの理由がありました。
「茅の輪」が選ばれた理由
- 古代中国では、とがった茅の葉には魔を祓う力があると考えられていた
- 茅の輪は、龍の化身である蛇がとぐろを巻いた形をあらわしている
詳しく見ていきましょう。
茅には魔を祓う力がある
草冠に矛(ほこ)と書く「茅(ちがや)」は、イネ科の植物で、鋭くとがった葉をしています。
古来、矛や刀剣には、魔を祓う力があると考えられてきました。
「茅」のとがった葉は、草の矛であり、神聖な力を持つと考えられていました。
そのため、厄難から逃れる目印に選ばれたのです。
輪の形が龍の化身をあらわしている
スサノオノミコトは、父神イザナギから海の統治を任された水の神様です。
水の神様、すなわち龍神です。
中国では、龍は1000年を生きた「蛟(みずち)」であり、蛟(みずち)は500年生きた蛇とされます。
茅の輪の輪っかは、蛟がとぐろを巻いた形であり、龍神スサノオの姿をうつした形代(かたしろ)なのです。
茅の輪くぐりの期間
茅の輪くぐりは、多くの神社で夏越の祓に行われていますが、中には12月の年越しの祓にも茅の輪くぐり神事がある神社もあります。
また6月30日の1日だけという神社もあれば、しばらく茅の輪くぐりができるという神社もあります。
例えば
- 京都の車折神社(くるまざきじんじゃ)は、6月は、まるまる1ヶ月間、茅の輪くぐりが出来ます。
- 日本最古の神社とされる奈良県大神神社(おおみわじんじゃ)は夏至の頃から7月の第1週にかけて「三輪の茅の輪」が置かれます。
- 九州総守護の諫早神社でも、6月下旬から7月の初めまで約2週間、茅の輪が置かれています。
お近くの神社や参拝したい神社があれば、いつからいつまで茅の輪くぐり神事をされているか、事前に調べておくと良いですね!
まとめ
お正月からの半年の罪や穢れを祓い、年末までの半年の健康と無事を祈る夏越の祓に、多くの神社で茅の輪が置かれます。
茅の輪は、スサノオノミコトが蘇民将来に一晩宿をもてなされた恩から、「「茅の輪をつけている者は、蘇民の子孫として厄難から守る」と約束した故事に由来した神事です。
茅の輪には、正しいくぐり方があり、以下のような順番で8の字を描くようにくぐります。
茅の輪のくぐり方
- 茅の輪の前で軽く一礼し、左足で茅の輪をまたいでくぐり、左回りに1周し、茅の輪の前に戻る
- 再び、茅の輪の前で軽く一礼し、今度は右足で茅の輪をまたいでくぐり、右回りに1周し、茅の輪の前に戻る
- みたび、茅の輪の前で軽く一礼し、左足で茅の輪をまたいでくぐり、もう一度、左回りに1周し、茅の輪の前に戻る
- 茅の輪の前で最後の一例をして、左足で茅の輪をまたいでくぐり、神前に進んで参拝する
また、くぐる時には、次の唱え詞(ことば)を唱えながら茅の輪を回ります。
茅の輪くぐりの唱え言葉
(みなづきの なごしのはらえするひとは ちとせのいのち のぶというなり)
思ふこと みな尽きねとて 麻の葉を 切りに切りても 祓ひつるかな
(おもうこと みなつきねとて あさのはを きりにきりても はらいつるかな)
蘇民将来 蘇民将来
(そみんしょうらい そみんしょうらい)
ちょっと長くて覚えるのが大変ですが、神社によっては唱え詞が書かれた紙が用意されているところもあります。
6月30日には、茅の輪くぐりで半年の穢れを落として、年末に向けて健康にハッピーに過ごせるよう、心身ともにスッキリさせましょうね!
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